矯正治療で保険が適用されるケースとは?適用後の支払額も解説

歯列矯正は、ごく一部の症例を除いては、国民健康保険をはじめとした公的な健康保険が適用されないものとされています。

しかし、先天異常性や顎変形症など特定の疾患に対しては、将来的に噛み合わせに異常が出ることが予測されるので「治療する必要性がある」と認められ、保険が適用されるケースがあります。

今回は健康保険が適用される歯列矯正の具体的な疾患名や、保険が適用された場合はいくら費用がかかるのか?などについても、詳しく掘り下げていきます。

この記事の結論

・指定された条件が整えば、健康保険適用で矯正を行える

・矯正が健康保険適用される疾患は、顎変形症や咬合異常など

・矯正で保険適用された場合にかかる費用はケースバイケースだが、概ね約30万円

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歯列矯正で保険対象となる症例


下記の3つに定められた疾患が、歯列矯正における「健康保険の適用」の対象となります。

  • 厚生労働省が定めた59の先天異常疾患
  • 顎変形症
  • 咬合異常

厚生労働省が定めた59の先天異常疾患

生まれながらにしてお口の中に異常が見られる先天異常(59の疾患)に起因した咬合の異常に対しては、健康保険が適用されます。具体的な疾患名としては、以下をはじめとする4つの疾患などが挙げられます。

  • 唇顎口蓋裂(しんがくこうがいれつ)
  • ゴールデンハー症候群
  • ダウン症候群
  • 筋ジストロフィー

これらの症状に該当する方やその可能性がある方は、前もって口腔外科などの医療機関を受診すれば、矯正にかかる費用が健康保険の対象となり得ます。

顎変形症

外科手術を伴うような顎変形症のケース、具体的には顎矯正手術、骨切り手術といった顎の外科手術が必要と診断されて「外科手術の前後に歯列矯正が必要である」と診断された方は健康保険の対象となり得ます。

ちなみに顎変形症であっても、一般的な歯列矯正のみで対応できるようなケース、要するに外科手術を伴わない歯列矯正の場合は健康保険の対象外となり、自費診療です。

咬合異常

一般的には6歳頃から永久歯が生え始めて、12歳頃までに永久歯は生えそろいます。しかし、時がたっても永久歯が生えてこないこともあり、この症状は「永久歯萌出不全」と診断される場合があります。

永久歯萌出不全は先天的な疾患なので、最初から永久歯がなかったとも考えられますが、歯ぐきの中に埋伏歯として埋まってしまって「出たくても歯が出られない状態」になっているケースもあります。

このような前歯3歯以上の永久歯萌出不全に起因した咬合性異常のケースでは、歯ぐきを切開して歯を引き出す「埋伏歯開窓術」という手術をおこないます。

埋伏歯開窓術をした際に、合わせて歯列矯正をする場合においては、歯列矯正費も健康保険の適用です。

指定医療機関でのみ保険で歯列矯正を受けられる


まず、前提として健康保険が適用される歯列矯正は「指定自立支援医療機関」や「顎口腔機能診断施設」とよばれる厚生労働省から認定を受けた医療機関でのみ適用されます。

指定自立支援医療機関や顎口腔機能診断施設は、身体上の障害を軽減して日常生活を容易にするための治療を目的としています。

それらに加えて設備や人材のレベルなど、厚生労働省が独自に設けたさまざまな基準をクリアしている医院のみに認定される、限られた医療機関のことを指します。

保険適応となる矯正装置はワイヤー・ブラケット装置のみ対応となり、マウスピース矯正は結構保険が使えません。

詳しい医療機関の場所など実際のことに関しては、地方厚生局のホームページに各種情報が掲載されておりますので、ご覧になるとよいでしょう。

矯正で保険が適用された場合にかかる費用


以下に、健康保険が適用できる歯列矯正として代表的な疾患である「唇顎口蓋裂」と「顎変形症」に対する費用や治療期間のおおよその目安を示します。

30万円程度の支払いになるケースが多い

一般的に歯列矯正費用は自費診療隣、費用相場は100万円程度です。したがって、健康保険が適用される歯列矯正であれば概ね3割負担となるので、約30万円ほどで歯列矯正が行えるといった計算になります。

注意したい点は、保険治療の場合は都度払いになるという点です。歯並びの状態によって通院期間や通院回数が増えれば当然ですが、その分治療費も追加されますので、よく留意しましょう。

保険が適用される具体例

厚生労働省が認めた疾患によって、以下4つの疾患をはじめとする「歯並びの異常がある」と認められた場合は、歯列矯正に対して健康保険が利用できます。

  • 唇顎口蓋裂(しんがくこうがいれつ)
  • ゴールデンハー症候群
  • ダウン症候群
  • 筋ジストロフィー

また上記のような疾患であっても、厚生労働省から認定を受けた歯科医院でなければ保険適用はされませんので、歯列矯正を受ける前に確認しましょう。

先天異常疾患の一つ唇顎口蓋裂の場合

唇顎口蓋裂とは、概ね400~500人に1人程度の割合で発生するといわれている、比較的よく見られる疾患のことです。上唇や口蓋(上顎の内側の部分)が生まれつき裂けた状態である先天的な形成異常のことを指します。

唇顎口蓋裂の治療費用(健康保険適用の場合)は、入院費と治療費を合わせて約15~30万円ほどかかるのが相場です。

唇顎口蓋裂のケースは保険が利用できるだけでなく、医療費の自己負担額を軽減する公費負担医療制度を利用できることもあります。

育成医療(18歳未満の児童が対象)や更生医療(18歳以上の身体障害者手帳の交付を受けた方)の給付を扱う「指定自立医療機関」のみと限られますが、自己負担額が原則1割となります。

また、1ヶ月の自己負担額には上限があるため、かなりの負担額軽減が見込まれるでしょう。

顎変形症の場合

大幅に上顎や下顎が出ている(出っ歯や受け口)・下顎が極端に小さい・顎が大きく左右がずれているなど、幅広いケースにおいて顎の骨の大きさや形に異常がある状態を、顎変形症とよびます。

顎変形症の費用(健康保険のケース)は、手術や入院費・歯列矯正費を合算すると約30~40万円弱が相場です。

これは高額療養費制度といって、1カ月のうちに同じ病院に支払った医療費が概ね80,100円(所得額にもよる)を超えると、国民健康保険や社会保険に加入している場合において80,100円を超えた場合は治療費が戻ってくることがあります。

概ねの目安ですが、手術をおこなう顎をずらしたあと、噛み合わせが安定するように10~24ヶ月間ほどかけて歯を並べる「術前矯正」に約2年の歳月をかけることが多いです。

その後は入院して外科手術をしたあと、術後の顎の骨や筋肉が後戻りするのを防ぎつつ噛み合わせを整えるための「術後矯正」を約1年程度おこないます。

咬合異常の場合

前歯3本以上の永久歯萌出不全に起因する場合の咬合異常(埋伏歯開窓術を必要とするものに限る)は健康保険が使えるケースがあります。

埋伏歯開窓術とは、永久歯の萌出が遅れており埋伏している歯に対して、外科手術で埋まっている歯に矯正装置をつけて、引っ張り出すように矯正の力を加えて萌出させる治療です。

咬合異常の治療費用(健康保険適用の場合)は、歯列矯正に関する費用は約30万円前後で手術費用は約20万円前後です。

まとめ


生まれながらにして、先天異常(59の疾患)があるケースなどにおいては、歯列矯正でも健康保険が利用できる場合があります。

健康保険が適用された際の負担額は、一般的なケースだと3割負担となり、概ね約30万円ほどで歯科矯正が行える計算です。

歯列矯正が保険適用された場合は、その都度のお支払いになりますので通院期間や通院回数が増えれば、その分治療費も増していきますので、よく留意されるようにしてくださいね。

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