今後ますます重要性が増すと考えられる小児矯正と、それに伴い更なる発展が期待されるマウスピース矯正。今回はおおぬま歯科クリニック歯科矯正医 大沼麻柚子先生(以下、大沼先生)と、Smile Teethを運営するデンタルネットワーク株式会社 代表取締役であり歯科医師の山本伸彦(以下、Smile Teeth 山本)が、小児歯科・マウスピース矯正の今後や矯正医としての在り方について語り合いました。
目次
矯正科医の小児矯正への意識
Smile Teeth 山本
矯正の専門医や認定医と言われている人達あるいは矯正歯科学会が、わりと今も旧態依然としている集まりという部分があって、なんで子供に対してちゃんとアプローチしないの?っていう疑問があって。
例えば「放っておけば100万とれるでしょ」っていう矯正の先生が中にはいるじゃないですか。それはどうなんでしょうか。
大沼先生
それはやっぱり矯正科医としてはよくはないですよね。矯正科医ってなんで矯正科医なのかって言ったら、その人の咬合を治すから。私がいつも患者さんに言うのが
そういう視点を持っている先生が全部じゃないっていうのは確かだと思います。それは非常に嘆かわしいことではあると思うんですが。ただ今は、機能と小児矯正っていうのが大事だということに重点を置くようになってきていますけどね。
マウスピース矯正の可能性について
マウスピース矯正の出現で変化する矯正治療
Smile Teeth 山本
今までは矯正っていうと、多くの人はワイヤー・ブラケットを使うイメージがあると思うんです。ただマウスピース矯正が出現したことによって、今後どう変わっていくと思われていますか?
大沼先生
ブラケットが着いていると、どんなに頑張っても口の衛生面は悪くなりますよね。そういう意味では特に、
あとは吹奏楽でトランペットを吹いている患者さんはブラケット着けられないですから。だからそういう方には、好きなときに着け外しできるマウスピース矯正はすごくいいですよね。
今はブラケットもワイヤーも白いの出てますし私も使ってますけど、やっぱり笑ってしまえば着けた感は分かるので。
Smile Teeth 山本
だから、基本的にはってことですよね。
大沼先生
違うと思いますね、やっぱりその辺は。
今後ますます広がりを見せるマウスピース矯正
Smile Teeth 山本
アメリカではかなりマウスピース矯正が進んでいるようなんですけども、日本での今後の流れとしては、大沼先生はどのようなイメージをお持ちでしょうか。
大沼先生
どんどん広まっていくでしょうね、マウスピース矯正は。SNSでの宣伝が半端ないですよね。あとやっぱりモニターなどをやってるところも多いですし。
Smile Teeth 山本
例えばホワイトニングにしても「もっときれいになりたい」というのは患者さんの純粋な気持ちじゃないですか。だから歯科医院に行く理由はそこが入り口でもいいと思うんですね。
「歯科医院は痛くなってから行くところ」ではなく、美容院とか床屋さん感覚で「きれいになりたいと思って行くところ」で最初はいいはずなんです。
大沼先生
そうですね。あとマウスピース矯正に関しては、患者さんもエステ感覚だと思うんですよね。ホワイトニングとあまり変わらない感覚。今はマスク時代で、今のうちに歯並びを治そうとしてる人いっぱいいるじゃないですか。
Smile Teeth 山本
ただマウスピース矯正は、メーカーによって認定医の数がすごく多いところがあったり、提携医院の数が少ないところがあったり、マウスピース矯正の中でもいろいろあるんですけども、どこに行っても均一なサービスが受けられるのが一般の消費者としては当たり前なんですよ。ただ現実的にはそこに至っていない部分がありますよね。一般の人はどう判断したらいいの?っていうことが今後すごく重要になってきますよね。
子供の歯並びに関する問題点とそれに伴う小児矯正の取り組み
不正咬合につながる子供の歯並びに関する問題点とは
Smile Teeth 山本
小児矯正というテーマで少しお話しいただいてもよろしいですか?
大沼先生
小学校の検診に行っても、まず姿勢が悪い。それはなんでかと言うと、舌が下がっていて下顎が後方にあることが多いからです。舌癖があったりして。そうすると気道が狭くなって開かないので、どうしても顎を突き出すかたちになって姿勢が悪くなります。
検診に行っても8割は不正咬合です。
健診に行かれる先生には、それもある程度は診れるようになっていただきたいなと思っています。機能をきちんと治さないと顎が成長してこないので、その辺のからみを分かっていただければと思います。今この子は顎骨が成長してないんだなっていうのを、分かるようになっていただきたいとは思ってますね。
Smile Teeth 山本
鼻呼吸の重要性だったり気道の状態だったりを理解しているドクターは、そんなにいらっしゃらないような気がしますが。
大沼先生
そう思います。
小児矯正は早期に始めるのが望ましい
Smile Teeth 山本
小児矯正の取り組みって安価な矯正方法、例えばムーシールドとかを使った治療などがありますよね。たくさんの選択肢がある中で安価な小児矯正を始めるのがいいのか、あるいは本格的に診断して小児矯正をするのがいいのか、どちらがおすすめですか?
大沼先生
上顎下顎の大きさに不均等がなく、ただ歯並びがガタガタしているくらいであれば、比較的安価なマウスピースでいいと思うんです。私はプレオルソも使いますし。遺伝的ではなく、機能的な問題がある乳歯の受け口の症例には、プレオルソはよく効きます。
あとは機能的な問題がほとんどなので。プレオルソとかムーシールドは、3歳から使えることになっているので、私はだいたい年中さんくらいからは使っています。
口の中に装置を入れておく状態に慣れるっていう意味では、そういう装置は有効です。歯の型取りが苦手な子もいるじゃないですか。そういう子はまずそれで慣れさせます。
あとはプレオルソは特にそうだと思うんですけど、機能的な問題を治す働きを持っているので、機能トレーニングも兼ねて舌トレーニングの装置として使ったりもしています。
歯並びの悪さを放置することで起こる弊害
無呼吸・顎関節症・精神的な問題にまで
Smile Teeth 山本
歯並びの状況が悪いまま放置していると、大人になってどういうことが起きるんですか?
大沼先生
その結果、歯周病になりやすく、そこから歯を失ったり、ひいては心筋梗塞や痴呆などの重大な疾患に繋がることもあります。
また、無呼吸・顎関節症・歯がダメになって咬合が崩壊したり、頭痛・肩こり・めまいなどのメニエール病の症状、不定愁訴・自律神経失調症などが起こったりする可能性があります。
Smile Teeth 山本
あと精神的な問題にも発展していきますしね。
将来矯正を考えている患者さんに伝えたいこと
歯並びは見た目だけではなく機能を良くすることが重要
Smile Teeth 山本
日本の将来の患者さんに伝えたいことはありますか?
大沼先生
命って口を令するって書くんですよね。口が良ければ命につながる、機能がよくなれば歯並びがついてくると思っていただきたくて。
子供の歯並びに関して親として気をつけること
子供のいびき・口をぽかんと開けている・姿勢の悪さには注意
大沼先生
まずは
口に問題があって、下顎骨が後方にあるか、上顎骨が発育不足で小さい状態ですと、気道が狭くなって空気を鼻から十分に吸えなくなり口呼吸になるので、いびきをかきます。
あとは
鼻で呼吸をすることの重要性
Smile Teeth 山本
鼻呼吸のメリットをお話しください。
大沼先生
ヘモグロビンと酸素が結びつくことによって、脳にも酸素が送られるのでお子さんの成長にはすごくいいです。
また、私は患者さんにあいうべ体操をおすすめしています。